定年後にやってみたい事があり、それに向けて新しい知識を付けたい、資格を取りたいと思っていても、勉強や資格取得にかかる費用が高くて躊躇されている方はいらっしゃるかと思います。
雇用保険の給付の一つ「教育訓練給付金」は在職中でも退職後でも利用できるお得な給付です。また2025年4月より条件がそろえば教育訓練中であっても失業給付との両方の受給も可能となりましたので、合わせてご案内いたします。
教育訓練給付金とは
雇用保険の教育訓練給付制度は、働く方々のスキルアップやキャリア形成を支援するための制度です。この制度では、厚生労働大臣が指定する教育訓練(なんと約17,000件ほどあります!)を修了した場合に、受講費用の一部が給付されます。教育訓練給付金は、教育訓練のレベルなどに応じて以下の3つの種類があります。
- 専門実践教育訓練
- 特定一般教育訓練
- 一般教育訓練
単純に、専門実践→特定一般→一般の順で、難易度高めかつその職業へのニーズが高い物として区分されており、難易度&ニーズ高めの講座に多く給付金が支払われる仕組みとなっております。
専門実践教育訓練
- 特に労働者の中長期的キャリア形成に資する教育訓練が対象となります。
- 教育訓練経費の50%(年間上限40万円)が訓練受講中6か月ごとに支給されます。
- 資格取得等をし、かつ訓練修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、教育訓練経費の70%(既に支給を受けた50%の給付の年間合計額と教育訓練経費の70%に相当する額(年間上限56万円)の差額)が支給されます。
具体的には、介護福祉士、看護師、美容師、保育士、歯科衛生士、法科大学院、教職大学院など、かなりレベル高め、あるいはニーズが高そうな職種が対象です。
特定一般教育訓練
- 特に労働者の速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練が対象となります。
- 教育訓練経費の40%(上限20万円)が訓練修了後に支給されます。
- 上記に加え、資格取得等をし、かつ訓練修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、教育訓練経費の50%(既に支給を受けた上記の給付額と教育訓練経費の50%に相当する額(上限25万円)の差額)が支給されます。
※令和6年10月以降に開講する講座の場合
具体的には、大型自動車第一種免許、社会保険労務士、FP、行政書士、税理士などがありました。私のいち推し、FPキャンプは対象講座?と思って調べましたが残念ながら見つけられませんでした。
一般教育訓練
- その他の雇用の安定・就職の促進に資する教育訓練が対象となります。
- 教育訓練経費の20%(上限10万円)が訓練修了後に支給されます。
具体的にはITパスポート、日商簿記、医療事務認定実務者、インテリアコーディネーターなどがありました。
具体的にどのような講座が対象かは毎年4/1に更新されているようです。厚生労働省のHPにて直接確認するのがベストです。
教育訓練給付金は対象の講座数が非常に多く、何か勉強しようかな?と検討されている方は是非一度チェックしてみてください。
会社に内緒で教育訓練給付金は申請できる?
資格取得や勉強の勉強をしていることを会社には知られたくないのだけど・・と考えられている方にお伝えします。教育訓練給付金はご自身でハローワークに申請をするものです。申請書類は2024年2月より電子や郵送の申請ができる事になりました。
その中で必要な書類「雇用保険被保険者証」ですが、会社が預かっていることが多いと思います。会社の人事や総務に依頼すればいいのですが、それも依頼したくない場合はハローワークで再発行の手続きという方法もあります。
その場合には、運転免許証、健康保険の被保険者証等の身分証明書の提出が必要になります。
ついでながら・・教育訓練給付金は結構な金額を支給してくれますので手続きのお作法、提出期限が細かく定められています。きちんと厚生労働省やハローワークの最新の案内を確認してから手続きをしてくださいませ。
お金を借りる際も当てはまりますが、お得な物であるほど手続き、審査が厳しいのです。楽に借りられるものは返済金利が高いです。
退職後に教育訓練給付金は受けられる?
はい、受けられます。ただし時間の制約がありますのでご注意ください。雇用保険の被保険者でなくなった後(要は退職後)1年以内に受講を開始することが必要になります。
また、失業給付ですが2025年4月以降にリスキリングのために教育訓練等を受けた(受けている)場合、今まであった給付制限が解除され、基本手当(いわゆる失業給付)を受給できるようになりました。
ただし、何でも勉強していれば給付制限が解除される訳ではありません。
①:教育訓練給付金の対象となる教育訓練、②:公共職業訓練等、③:短期訓練受講費の対象となる教育訓練、④:①‐③に準ずるものとして職業安定局長が定めるもの、と決まっております。
具体的に受けたい講座や資格などありましたら、厚生労働省のHPなどから慎重に下調べをしてから講座受講手続きをすることをお勧めします。教育訓練給付金を受け、失業給付も受け、さらにその後の仕事につながるならば、手続きは面倒でもかなりお得です。
給付ありきではなく、その後活かせるよう検討しよう
教育訓練給付金ですが、もちろん新しい知識や資格を得るのは大事ですが、その先の高いスキルを持った方の雇用を促進することを目的としたものですので、資格を取って給付を貰って終わりですとかなり勿体無いです。
実際知り合いの方で、定年後に教育訓練給付金対象の「フラワー装飾技能士」の講座を受講し、資格を取得された方がいます。
しかしお花の仕事は水の入った重いバケツに花を入れて持ち運び、お花が痛まないよう、冷蔵庫のような温度の低い場所で管理するため、なかなかの重労働です。
実技の段階で当初持っていた優雅なイメージとは違ったようで、結局その職に就くのは諦めたと聞いております。きちんと講座の受講を完了し、教育訓練給付金の条件を満たしているため給付金は受領されたものの、なんだか勿体ないな・・と思ったりしたものです。
もちろん興味のある事を学んでみたり、資格を取得することは大事ですが、教育訓練給付金を利用される際は、その先その知識・資格をどう活かすのか具体的にイメージされることも大事かと思います。
自分のやってみたい事で、少し稼ぐことができて生活も潤い、社会とのつながりも持てる、さらに社会参加の張り合いがあって健康状態にも良い影響がある。
特にシングルは、社会的つながりは持ち続けるよう心掛けて、年齢を重ねるごとに増す孤独リスクは全力で回避したいものです。
細々とでいいので、”楽しめる仕事”を持って、お金、健康、社会的つながりの一石三鳥を狙いたいな、と私も日々模索しております。