学びとキャリアの再設計

再雇用だけが選択肢じゃない!65歳からの働き方を見据えた50代の準備とは

人生100年時代、「60歳=引退」という価値観はもはや過去のものになりつつあります。 実際、正社員として20年以上勤務した60代前半の就業率は95.8%、60代後半の就労率は89.3%という驚くような調査結果も出ています。 一方で、シニア世代の働き方には「再雇用」以外の選択肢を希望する声も増えているのです。 今回は、企業と労働者の意識のギャップを踏まえながら、50代のうちから備えておくべきポイントを整理します。

参考:パーソル総合研究所調査レポート「正社員として20年以上勤務した60代」の就労実態調査

企業側の動き──65歳までの雇用確保措置の現状

65歳まで働くのは当たり前になる?厚生労働省の資料から

2023年の厚生労働省の資料によれば、定年年齢が65歳未満の企業のうち、99.9%が高年齢者雇用確保措置(「定年制の廃止」、「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」のいずれか)を取っています。
多くが定年年齢が60歳のままでの「継続雇用制度の導入」ですが、「定年制の廃止」あるいは「定年の引き上げ」を実施している企業も30%程度あるようです。

現時点では多くはないですが、66歳以上の雇用確保措置定年延長を実施している企業があります。 背景には、深刻な人手不足や高齢者の労働力への期待があるようで、集計結果からは企業側はさらに雇用の継続を図る動きがみられます。

参考:厚生労働省 「令和5年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果

冒頭にお伝えしたように60代、特に正社員で勤続年数が長い方の就業率は驚くほど高いのですが、実際に65歳、さらにそれを超えて働く側はどのような選択をしているのでしょうか?

シニアはどう考えている?65歳以降の働き方の実態

再雇用が最多だが、「転職」も25%以上

ヒューマンホールディングスによる調査(65〜74歳の1000人対象)では、「再雇用」が最も多い一方で、 「異なる業界・異なる職種での再就職」が25.3%を占めるという意外な結果が出ています。

これは、シニア層が「会社に残る」以外の選択肢にも意欲を持ち、定年後に新たなキャリアを構築されている人も多数いることを示しています。

参考:ヒューマン 定年退職後に働いている65~74歳の男女対象 就労の実態や働き方に対する意識を調査

定年後に働く理由は人それぞれ

また、「定年後に働く理由」は、1位「生活費を得るため」、2位「社会とのつながり」、3位「身体的健康の維持」。必ずしも“お金のため”だけの就労ではない様子が伺えます。

その一方で、「理想的な1週間の就労日数」は「3日」が多数、ただし実際の勤務は「5日」となってしまうとのこと。私も聞かれたら同じ回答をするだろうな・・と思われます。

50代のうちに備えるべきこと──“選べる働き方”のために

キャリアの棚卸しで、自分の市場価値を把握しよう

もちろん一番スムーズなのは同じ会社での継続雇用です。ただ自分の希望通りの就労条件とも限らず、不満が出る可能性もありえます。継続雇用というレールに乗るだけでなく、「自分の意思で働き方を選ぶ」ためには、 今のうちに自分のキャリアを整理し、強みを把握しておくことが重要です。

「違う業界・職種」も選べるように、今から動く

60代で初めて転職活動を始めるのはハードルが高いもの。 学び直しや資格取得、副業などを50代から始めておくことで、選択肢の幅が大きく広がります。

「収入を得る目的」も再確認を

働く理由は人それぞれ。生活費のため、やりがいのため、健康維持や社会とのつながりのため――。 自分にとって「働くこと」の意味を明確にしておくことで、迷わず進むことができます。

FPとうかの場合

社会保険労務士の試験に合格したのは、かなり前のこと。当時は社労士事務所で勤務しながら、 「将来はこの資格で独立するのもアリかもしれない」と、選択肢の一つとして考えていました。

とはいえ、当時は不況で就職氷河期真っ只中。会社員の安定と高収入を求めてTOEICスコアを取得し、外資系IT企業の人事部へ転職しました。 米国企業ならではの雇用の安定性には多少の不安もありましたが、自分なりに目的は果たしたと感じています。

しかし、あのコロナ禍のステイホーム期間が大きな転機でした。実質的な「定年後の仮体験」により、 毎日が日曜日状態でストレスは溜まらないものの、運動不足すぎて健康を保つのが難しいと痛感しました。

定年したら完全リタイアするのではなく、無理なく続けられる仕事があれば、健康、ちょっとした収入、社会的つながりが保てると思い、FP資格取得決意し現在に至っております。

まだ定年までは時間はありますが、希望する働き方で仕事が続けられるよう引き続き精進しようと思っております。(週3回勤務OKなら、今の会社で継続雇用するのも悪くはないと思っていますが、どうなることやら・・)

《今からできる4つの準備チェックリスト》

以前に「50代独身のキャリア転換術──年収を上げる「攻め」と、状況変化に備える「守り」の戦略とは?」という記事でもご紹介しました。
希望する働き方を求める「攻め」と、役職定年やリストラ、給与の減額など、不本意な事態に備えておく「守り」に共通した準備は以下の4点となります。

  • 1. キャリアの棚卸し(実績・スキルの見直し)
    これまでの職歴・スキル・成果を振り返り、「再現性のある強み」として整理してみましょう。職務経歴書や副業プロフィールにも活用できます。
  • 2.情報収集(転職市場、業界トレンド、副業制度など)
    定年後に実際に方向転換をしてみた実例、柔軟性のある働き方ができる業界は?最近流行りのリゾートバイトとは?など沢山の情報から心に留まるものは無いかチェックしてみましょう。
  • 3.リスキリング・資格取得(例:中小企業診断士、ITパスポートなど)
    FP・社労士などの資格や、オールマイティなIT、AIの知識など、関心分野の学びを始めましょう。将来の収入源や選択肢につながります。
  • 4.ネットワーク強化(信頼できる人脈の構築)
    自分の興味ある分野に実際に携わっている方と交流をしてみましょう。昔からの知り合いがいればベストですが、その分野の方のSNSなどチェックしてみるのも、(知り合いよりつながりは薄いですが)今の時代にあった人脈の構築かもしれません。

まとめ:65歳以降をどう生きるかは、50代の今決まる

定年後に働く目的は人それぞれです。お金のため?社会とのつながり?健康維持?「なぜ働くのか」が明確だと、ブレない選択、行動が取れます。

もはや50代、定年が見えてくる頃はふんわりと”自分探し”をしている時間は少ないです。現在の状況から自分の求める働き方にシフトできるよう、備えが必要です。

企業の制度に頼るだけでなく、自分で選べる準備をすることが、これからの時代の“安心”になります。 再雇用も、転職も、起業も、「備えてきた人」だけが選べる選択肢。 今このタイミングで、一歩を踏み出してみませんか?

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