50代の暮らしと孤独対策

60の崖と準備⑧|「終末の崖」最期の準備を誰が担うのか

60の崖と準備 終末の崖 アイキャッチ

※この記事は「60の崖と準備」シリーズの第8回です。収入・健康・孤独・役割など、定年前後に訪れる変化を8回にわたって整理しています

はじめに

60代以降に向けて考えておきたい「60の崖」シリーズの最終回は、 「終末の崖」──自分の最期の準備を誰が、どのように担うのか というテーマです。

少し重く感じる話題かもしれませんが、結論から言うと、最期の準備を少しだけ前倒しで考えておくと、 「今」の生活がむしろ安心して送りやすくなる と私は考えています。

「まだ先のことだから」とすべてを後回しにするのではなく、 できる範囲で情報を整理し、「ここまでは自分で決めておく」というラインを決めておく。 その小さな一歩が、「終末の崖」をなだらかな坂道に変える備えになります。

読者のお悩み整理

50代シングル会社員の方からは、次のような不安やモヤモヤをよく耳にします。

  • 自分が倒れたとき、誰がどこに連絡してくれるのか がはっきりしていない
  • 親の介護や相続の心配をしているうちに、自分の最期のことは手つかずのまま になっている
  • お墓のこと、葬儀のこと、考えないといけないのは分かっているのに気が重くて進まない
  • 身寄りが少なくなってきて、「最期は誰に頼ればいいのか」という不安がぼんやりとある
  • 終活の本やセミナー情報は増えてきたが、何から手を付けたらいいのか分からない

こうした不安は、一気にすべてを解決しようとすると重く感じてしまいます。

この記事では、情報を整理する・頼れる先を知っておく・自分の考えを書き残す という 3つのステップに分けて、「終末の崖」との向き合い方を考えていきます。

FPとうかの解説:「終末の崖」とは

「終末の崖」とは、人生の最終盤で必要になる手続きや意思決定を、 誰がどのように担うのかがあいまいなまま、時間だけが過ぎてしまう状態 をイメージした言葉です。

昔は、「最期は家族が看取り、葬儀やお墓のことも家族が引き継ぐ」という形が一般的でした。 しかし、今はシングル世帯だけでなく子どものいない夫婦世帯も増え、 「家族がすべて担う」ことを前提としにくい時代 になっています。

また、現役の会社員であれば、もしもの時には、

  • 勤務先から家族への連絡
  • 健康保険や退職金の事務手続き
  • 社会保険の届出

など、会社がある程度サポートしてくれる仕組み があります。

一方で、退職後はこうしたサポートがなくなり、 手続きや判断を誰がどのように行うのかを 自分で決めておく必要性が高まる のが実情です。

「終末の崖」は、「収入の崖」「健康の崖」「孤独の崖」など、 これまでの回で取り上げてきたテーマとも密接につながっています。 特にシングルの場合、体調の変化・人とのつながり・お金の不安 が重なると、 最期の準備がますます考えにくくなってしまうことがあります。

図表や例で見る「最期の準備」の現状

ここでは、「最期の準備」に関するいくつかのデータや傾向を、 イメージしやすい形で整理してみます。

1. 世帯構成の変化と「おひとりさま」

各種統計では、今後も単身世帯は増えていくと見込まれています。 「家族が自然とすべてを引き受けてくれる」ケースは、 今後ますます少数派になっていきそうです。

項目傾向
単身世帯の割合将来にかけて増加傾向
高齢の単身世帯今後も増えていくと見込まれている
身寄りの少ない高齢者地域での支援や見守りの必要性が増大

「誰もいないから不安」という見方もありますが、 あらかじめ準備しておくことで、自治体や専門職のサポートを受けやすくなる という側面もあります。

また、終末期の不安には、誰にも相談できない「孤立」も含まれます。人とのつながりをどう保つかは、60の崖と準備③|定年後に迫る「孤独の崖」とその備え方がヒントになるかもしれません。

2. 「終活」への関心と、実際の行動

終活に関する調査では、

  • 終活に「関心がある」人は7割以上
  • しかし、実際に具体的な行動をしている人は2割に満たない

という報告もあります。多くの人が「気になっている」のに、 日々の忙しさや心理的なハードルから、なかなか進められていない 状況がうかがえます。

これは決して「意識が低いから」ではなく、テーマ自体が重く感じられる ためです。 だからこそ、

  • すべてを一度に整えようとしない
  • できるところから小さく始める

という考え方が大切だと感じています。

3. サービスや選択肢の広がり

近年は、樹木葬・永代供養・生前整理・遺品整理・身元保証・死後事務のサポート など、 さまざまなサービスが増えています。

「身じまい」の分野は、今後も市場規模が大きくなると見込まれており、 公的な制度と民間のサービスの「間」を埋めるような取り組みも増えつつありその市場規模は約1兆円との資料もありました。
どのサービスが自分に合っているかは人それぞれですが、 「選択肢が増えてきている」ことを知っておく だけでも安心感は変わります。

身じまい市場1兆円規模の推移(日本経済新聞データをもとにFPとうか再作成)

注意点 シングルだからこそ意識したいこと

ここからは、50代シングル会社員の方が「終末の崖」に備えるうえで、 特に意識しておきたいポイントを整理していきます。

1. 情報を「自分以外にも分かる形」で残す

保険・銀行口座・証券口座・年金・パスワード・よく利用するサービスなど、 日常の中には「自分しか知らない情報」 がたくさんあります。

いざというときに周囲が困らないよう、次のような形で 情報の一覧を作っておく と安心です。

  • 紙のエンディングノートに、主要な情報を書き留めておく
  • パスワードそのものではなく、「どのサービスを使っているか」だけでも一覧化する
  • 年に一度、内容を見直す「更新日」を決めておく

すべてを完璧に書ききる必要はありません。 「ここを見ればだいたい分かる」 という目安があるだけでも、 後の手続きの負担はかなり軽くなります。

2. 相談できる窓口やサービスを知っておく

一人で全てを決めるのは大変ですので、 「困ったときにまず相談できる先」 を知っておくことも大切です。

  • お住まいの自治体の終活・高齢者支援窓口
  • 地域包括支援センターなどの相談窓口
  • 葬儀・お墓・生前整理などを扱う民間サービス
  • 信頼できる専門職(弁護士・司法書士・社会保険労務士・FPなど)

具体的な契約や手続きについては、それぞれの窓口や専門家に内容をよく確認し、 自分が理解・納得してから進める ことが大切です。

3. 自分の「希望」を言葉にしておく

延命治療、葬儀のスタイル、供養の方法などについて、

  • 「まだ決めきれない」という部分はそのままでよい
  • 「これは避けたい」「こうしてもらえたらうれしい」という希望だけ書いておく

といった形でも十分です。

大切なのは、「何も書かない」状態をそのままにしない こと。 書きながら迷ったり、後から考えが変わったりしても構いません。 そのときどきの自分の考えを少しずつ更新していくことで、 将来の手続きがスムーズになり、周囲の負担も軽くなります。

落とし穴 よくある後回しパターン

「終末の崖」に関して、避けたいのは次のようなパターンです。

1. 「そのうちやろう」と思い続けて、何もしない

終活関連の本や情報を読んで「大事だな」と感じても、 具体的な行動につながらないまま時間だけが過ぎる ことはよくあります。

対策としては、

  • 「エンディングノートを1ページだけ埋める日」をカレンダーに入れる
  • 「保険・口座のリストを1枚作る」など、小さなタスクに分ける

といった形で、本当に小さな一歩を予定に組み込む のがおすすめです。

また、最期の迎え方を考えるとき、自宅や実家など「住まい」をどうするかもセットで考える必要があります。空き家や住み替えの課題については、60の崖と準備⑤|「居住の崖」空き家・住み替え・地域適応の備えで整理しています。

2. 「家族が何とかしてくれるはず」と決めつけてしまう

兄弟や親戚がいるからといって、 必ずしも自分の希望や状況を理解してくれているとは限りません。

「きっと誰かが何とかしてくれるだろう」と任せきりにするのではなく、 「ここまでは自分で決めておく」「ここから先は●●に相談してもらう」 と、 役割分担をイメージしておくと安心です。

3. 不安な気持ちのまま、内容をよく理解せずに契約してしまう

最期に関するサービスは内容が複雑なものも多く、 不安な状態のまま契約を急ぐと、後から「思っていたのと違った」と感じてしまうこともあります。

重要なのは、

  • 契約内容や費用、解約条件などを自分の言葉で説明できるレベルまで理解する
  • 一度で決めず、必要であれば家族や専門家など、第三者の意見も聞いてみる

という「一呼吸おく姿勢」です。

まとめ 「最期」を意識すると「今」が整う

「終末の崖」は、誰にとっても避けられないテーマです。 ただ、その崖を「突然やってくる不安な出来事」にするのか、 それとも「少しずつ準備しながら向き合うテーマ」にするのか は、 50代の今の行動で大きく変わります。

このシリーズで取り上げてきた 「収入の崖」「健康の崖」「孤独の崖」「役割の崖」「居住の崖」「資産の崖」「アップデートの崖」も、 すべてこの「終末の崖」とつながっています。

  • 健康を保つことは、最期まで自分らしく過ごすための土台になります
  • 人とのつながりは、いざというときに支え合える関係にもつながります
  • 資産の見える化は、「もしもの時」の手続きにも役立ちます

最期の準備というと構えてしまいますが、 実際には「今の暮らしを整えること」そのものが、一番の備え になると感じています。

できるところから、できるタイミングで。
「終末の崖」を時折意識しつつ、今日一日を気持ちよく終えられるような選択 を、 少しずつ積み重ねていきましょう。

この記事を書いた人

FPとうか
ファイナンシャルプランナー1級/社会保険労務士試験合格者。
50代シングル会社員向けに、老後資金・働き方・学び直しなど 「これからの人生を整える情報」を発信しています。


▶ このシリーズのまとめはこちら(60の崖と準備まとめ

終末期の備えが気になり始めた方へ

ABOUT ME
FPとうか
1級FP技能士/社労士試験合格。 50代シングルが抱えやすい “定年前後のお金・制度・働き方” をわかりやすく整理して発信中。 未来の不安をほどき、自分で判断できるヒントをお届けします。 ● 詳しいプロフィールはこちら ● X(更新情報はこちら):@fptouka

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA