以前「孤独死」ついての記事でもご紹介しましたが、その件数は増加傾向にあります。日本では高齢化と単身世帯の増加により、人とのつながりが途切れてしまう「孤独の崖」が社会問題となっています。
これは決して他人事ではなく、特に50代シングル会社員にとって、定年で会社員でなくなった後に向けた孤独の崖対策は、現実味のある課題です。
国も対策に乗り出しており、内閣府に「孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム」が設定されています。
孤独の崖とは?
「孤独の崖」とは、定年や退職をきっかけに職場での人間関係の範囲が一気に縮小し、社会との接点が急減する現象を指します。職場が生活の中心であった人にとって、その喪失感は大きく、孤立状態に陥りやすくなります。
未婚・死別・離婚などで家族とのつながりが薄い人ほどそのリスクは高まります。
今は友達も多くて頻繁に交流しているし・・と思っていても、年代の同じ友人は加齢に伴い減ってしまいます。
先日同級生グループと、互いの老後やこの世を卒業する話題になった時も、「グループで一番最初も嫌だけど、一番最後も悲しいので真ん中が良い」という結論になりました。
確かに仲間を見送って自分が一番最後は寂しいだろうな、と想像します。
統計で見る「孤独の健康リスク」
内閣府の調査では、65歳以上の単独世帯が2040年には39%に達する見込みとされており、右肩上がりのグラフとなっています。
単独世帯であってもライフスタイルは様々ですが、孤独は「心の問題」だけではなく、身体にも深刻な影響を及ぼします。
研究によれば、人との交流が週1回未満の人は健康リスクが高まり、具体的には以下のような健康リスクを抱えることが分かっています。(人との交流が週1回以上の人との比較)
- 心疾患リスク:1.3倍
- アルツハイマー病リスク:2.1倍
- うつ病リスク:2.7倍
- 死亡リスク全体:1.5倍
さらに孤独は静かに進行し、やがて健康や生活を大きく壊すリスクを孕んでいます。人との交流が月1回未満の場合は、死亡リスクも高まります。「人付き合いの乏しさは喫煙と同程度のリスクである」というデータもあります。
参考:孤独・孤立に関連する各種調査について(内閣官房孤独・孤立対策担当室)
50代シングル会社員が直面する「孤独の崖」
会社員生活では毎日誰かと顔を合わせ、会議やちょっとした雑談などで会話をするのが当たり前ですが、定年を迎えた瞬間、その日常は途切れます。
「仕事仲間はいるが、職場外の友人がいない」──そんな人は一気に孤立する可能性があります。定年直後は職場の仲間とはSNSやメール、時折の飲み会などの交流はあっても、時と共に頻度は減ってくる可能性があります。
友人以外にも、地域の方など実際に会ってちょっとした雑談をする「ゆるいつながり」や、趣味などの活動で、オンラインであっても交流する人ががあるとないとでは、孤独感もだいぶ違いがありそうです。
孤独の崖を防ぐ4つの具体策
孤独の崖は自然に避けられるものではなく、意識的に備えることが必要です。また、長年の友人や兄弟、親戚などと太いつながりを持つのも大切ですが、それが無くなったときはさらに深い孤独の崖が待っていそうです。
ゆるいつながりで良いので、いくつか持つ事も大事です。今のうちから以下のような活動で、ご自身に合いそうなものを試すのは如何でしょうか。
- コミュニティに参加する
趣味のサークル、地域活動、習い事、推し活など、50代から職場以外の人間関係を育むことが大切です。どっぷり入り込まなくても、まずは軽い活動で大丈夫です。 - ゆるいつながりを複数持ち、大切にする
毎週会う必要はなくても、同窓会やボランティアなど「時々顔を合わせる関係」も孤独を和らげます。近所の人とご挨拶と「暑い/寒いですね。」程度のプラス一言も、ゆるいつながりの一つです。 - 外部とコンタクトを取る習慣を持つ
「安否確認」だけではなく「雑談」でのやり取りが、気持ちを支えてくれます。顔を合わせて話す以外の手段、顔出し無し、ハンドルネームでのチャットやオンラインでの会話などでもつながりは持つことができます。 - 弱さを共有できる相手を作る
不安や困りごとを話せる相手を1人でも持つことで、孤立感は大きく変わります。
人数は多くなくても、お互い話せる相手を持つ事は大事です。
いざという時、他者の手助けに応じるマインド
例えば単身者が病気などで周囲の助けが必要となった場合、地域などでその仕組みがあっても支援を拒否するケースが見られます。
行政などの支援も、本人が拒否してしまうと機会が遠のいてしまい、ますます孤独を感じる負のサイクルに陥ってしまいます。
今のうちから、万が一の時は助けを借りようと決めておくのは悪い事ではないと思います。
例えば、怪我などで病院への送迎などが必要になった場合は、友人に付き添いを頼むのも限界がありそうです。
民間や行政のサポート内容や、費用、依頼方法などを事前にチェックしておくのも良い備えだと思います。
まとめ
「孤独の崖」は目に見えない静かなリスクですが、健康、生活、そして命に直結します。収入や健康と同じように、50代から意識して備えることが重要です。次回は「役割喪失の崖」──社会的役割を失ったときの心の落差について考えていきます。