50代の暮らしとこころの整え方

60の崖と準備④|「役割の崖」──肩書がなくなったあとの自分

50代独身会社員にとって、定年は少し先の話と思いながらも、日に日に現実味を帯びてくるものです。

人によっては50代のうちに”第二の人生”のスタートを切ったり、定年後再雇用を超え、70代近くまで同じ会社で働き続ける人もいます。

時期が多少違ってもいつかは「会社員」「管理職」といった肩書が無くなります。その肩書を失った後、自分の存在意義をどう見いだせばよいのか──これが「役割の崖」です。

収入の減少や健康と同じくらい、事前の認識と準備が必要な課題といえます。

「役割の崖」とは?

「役割の崖」とは、定年や退職をきっかけに社会的肩書や役割を失い、自己価値や存在意義が揺らぐ現象を指します。役職定年も役割の崖の一つのきっかけです。

特に独身の場合、家庭内の役割が少ないため、仕事上の役割を失う影響は比較的大きくなってしまい、生きがい喪失や精神的な落ち込みにつながりやすいのです。

「孤独の崖」との違いと密接な関係

前回ご紹介した「孤独の崖」は外部とのつながり(人間関係・交流機会)の断絶がきっかけです。
一方、今回の「役割の崖」は、定年・退職などをきっかけに肩書や役割(会社員・管理職・専門職としての社会的機能)が失われることで、自己肯定感や生きがいなど内面が揺らぐ現象になります。

つまり、前者は世間との関係が希薄になってしまうこと、後者は自己らしさ、自分の方向性を見失ってしまうことが起点です。

  • 孤独の崖: つながりの断絶がきっかけ→世間との関係が希薄に
  • 役割の崖: 肩書、役割が失われるのがきっかけ→自己肯定感や生きがいが揺らぐ

そのため、「役割の崖」(肩書、役割が失われること)で自己肯定感が低くなってしまい、「孤独の崖」(他の方との交流が失われてしまう)につながるという、残念な流れになることもありえます。

その流れを回避するには、何かしらの社会活動参加をして会社以外の役割を持つ備えが鍵かな、と思っています。

注)以下データの「社会活動参加」とは、趣味やスポーツ、就業や地域貢献活動、高齢者の支援など幅広い活動に参加することを指しています。

データから見る、社会活動参加の効果

社会活動参加と満足度・生きがい感についての比較データをご紹介します。何かしらの社会活動をされている方の方が日常生活満足度、生きがい感を高く持てるようです。

<表1>社会活動参加と満足度・生きがい感

区分日常生活満足度(%)生きがい感(%)
社会活動参加者82.0%84.5%
非参加者70.8%64.2%

<表2>社会活動で得られたメリット(複数回答)

参加者が感じたメリット割合(%)
生活に充実感ができた47.9%
新しい友人が得られた36.5%
健康や体力に自信がついた33.1%
地域社会に貢献できた31.6%
お互いに助け合えた26.0%

参考(表1・表2とも):高齢者支援等の社会活動への参加とその効果について
(一般社団法人JA共済総合研究所)

50代独身会社員が取るべき準備

「役割の崖」からの「孤独の崖」の流れを防ぐには、前述のデータからも社会活動に参加することで緩やかにシフトチェンジができ、日常生活の満足度や生きがい感も高く保てそうです。
では、具体的に今からどのような準備が有効か、考えてみました。

  1. 仕事以外の役割を作る:ボランティアや資格取得、趣味活動を始めておく
  2. 人との緩やかなつながりを持つ:地域活動やサークルに参加し、定期的に顔を合わせる習慣を作る
  3. 「誰かに必要とされる」感覚を意識的に持つ:家庭での役割が少ない分、社会的な小さな役割を複数持つ
  4. 心の準備をする:肩書がなくても「自分らしさ」を示せる価値軸を持っておく

具体的には、新たな役割(誰かに貢献している実感)を先に準備し、それを基点につながりを増やすと、両方の崖を同時に緩めやすくなります。逆に、つながりづくりだけ行っても役割が空白だと、参加が惰性的になり離脱しやすい——この順序がポイントです。

今、仕事も忙しくてそんな準備どころではない・・と思われた方もいると思います。
しかし、以前に書いた「50代の後悔に学ぶ」の後悔第1位は「50代のうちに、もっと定年後の人生設計をしておけばよかった」です。

先輩方の後悔を踏まえ、連休など少し時間に余裕のある時に考えてみるのは如何でしょうか。

ところで、現役の時に役職が高めだった方にありがちですが、リタイア後に、今まで勤務していた会社名や肩書で「元●●会社 部長」などという名刺を持ち、自己紹介する方もいたりします。

既に無い肩書に頼らずとも、今までの人生経験で培われた人間性やスキル、対応能力は備わっています。内に備わった財産を活かして、新たな関係を築く事が大事だと思います。

FPとうかの「役割の崖」対策は?

個人的には上記①‐④の準備に加えて「ちょっとした仕事をする」もありだと思っております。新しい事でも、今までの経験を活かした事のどちらでも良いと思います。
世間と関わりを持つ事が出来て、何らかの貢献ができ、頭も回転させ、ほんの少し収入も入ればいいことづくめです。

「役割の崖」が来るのは、早ければ数年先に”自分定年”をするか、もうしばらく会社員を頑張り続け最長10年以上後なのか・・まだ時期は分かりませんが、その準備の一環で、FP1級合格後はブログの運営にもチャレンジしております。

試行錯誤の連続ですが、IT関係の知識も少し増えた実感もあります。ブログ運営の師匠や仲間も欲しいなぁと思っている今日この頃です。

まとめ

「役割の崖」は「孤独の崖」と密接に関連し、放置すれば心身の健康や生活満足度に悪影響を及ぼします。

しかし50代から心構えと準備を始めれば、定年後も多様な役割を持ち、生活満足度や生きがいを保つことができます。「崖」ではなく「新しいステージへの橋渡し」に変えるかどうかは、今からの準備次第だと思っております。

次回は「60の崖⑤|居住の崖──住まいと地域に適応できなくなる現実」をお伝えしたいと思います。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA