60の崖と準備⑦|「アップデートの崖」学びを止めた瞬間に取り残される
主に50代シングル会社員の定年前後の“気になる不安”に寄り添い、
年金・暮らし・働き方・終活まで制度に基づき解説しています。
実務経験と資格に基づく、わかりやすい情報発信を心がけています。
※この記事は「60の崖と準備」シリーズの第7回です。収入・健康・孤独・役割など、定年前後に訪れる変化を8回にわたって整理しています
はじめに 「学びを止めた瞬間」に崖は始まる
60代を前に、収入・健康・孤独・役割・住まい・資産など、いくつもの「60の崖」が目の前に現れます。その中でもじわじわと効いてくるのが、今回のテーマである「アップデートの崖」です。
ここでいうアップデートとは、知識やスキル、考え方を時代に合わせて更新し続けること。働いている間は、仕事を通じて半ば強制的に情報が入ってきますが、定年をきっかけに「リタイアしたし、まぁいいか」となった瞬間から、少しずつ世の中とのズレが広がっていきます。
<この記事の目的>なぜ「学びを止めること」が危険なのか、どうすれば無理なくアップデートを続けられるのかを、データと実体験を交えながらお伝えします。
読者のお悩み整理 こんな不安はありませんか?
50代シングル会社員の方から、次のような声を時折耳にします。
- 最近のIT用語やAIの話題についていけず、新しいシステム導入と聞くだけで引きがち
- 定年後に新しいことを始めたいと思いつつ、今さら勉強する気力が湧かない
- スマホやネットサービスの設定が苦手で、つい昔のやり方を続けてしまう
そして心のどこかでこう思ってしまうこともあります。
- 「このままでも何とかなるのでは?」
- 「定年も近いことだし、今さら頑張らなくても……」
しかし、「今さら…」と思って学びを止めてしまうことこそが、アップデートの崖の入り口です。崖の手前でブレーキを踏むのか、そのまま流されていくのかで、定年後の選択肢は大きく変わります。
FPとうかの解説 「学ばない国」日本と、50代の現実
まずは、日本の「学び直し」の実態を確認してみましょう。
- ミドル・シニア層(35〜64歳)で、何らかの学び直しをしている人は約2割弱にとどまる※1
- 経済産業省の調査でも、社外での学習や自己啓発を「まったく行っていない」人は4〜5割程度というデータがある※2
国際的に見ても、日本は「大人があまり学ばない国」とされています。 一方で、技術や働き方の変化は確実にスピードを増しています。
- AIやデジタルツールに仕事の一部が置き換わる
- 会社のシステムや業務フローが数年でガラリと変わる
- 情報の入口が紙からオンラインへとシフトする
この流れの中で「学ばない」ことを選ぶと、知らないうちに「選べる仕事」「つながれる人」「アクセスできる情報」が減っていくのは、ある意味当然の結果ともいえます。
特に50代シングル会社員にとっては、
- 定年後も何らかの形で働き続けたい
- 社会とのつながりを保ちたい
- お金だけでなく、日々のハリや生きがいも確保したい
という現実的なニーズがあります。 そのためにも、「最低限のアップデートを続けておくこと」自体が、老後のリスク対策になると考えています。
参考:※1 日本のリカレント教育の現状(内閣府)
※2 未来人材ビジョン(令和4年5月)(経済産業省)
「学ぶ人」と「学ばない人」の差
学びの有無がメンタル面にも影響を与えることが、調査※からも見えてきます。
- 趣味の分野も含めて学び直しをしている人ほど、将来のキャリアや収入への不安が少ない
- 新しいことを学ぶことで、「まだ自分にもできることがある」という手応えを持ちやすい
感覚的にも、次のようなイメージの違いが出てきます。
- 学びを続けている人: 「分からないことも多いけれど、調べれば何とかなる」「次に活かせそう」と前向きになりやすい
- 学びを止めている人: 「今さら覚えられない」「どうせ自分には無理だ」と、挑戦そのものを避けがちになる
この差は少しずつ積み重なり、定年後の「選択肢の数」や「気持ちの余裕」になって表れてきます。
新しい学びは、定年後の「役割づくり」にもつながります。肩書がなくなったあとの自分について考えたい方は、60の崖と準備④|「役割の崖」肩書喪失後に陥る落差と50代の備え方もあわせてご覧ください。
参考:※会社員1600人を対象にしたリスキリングに関する調査(アデコ 2023/4/24)
インターネットとAIを活かす「50代の学び方」
ありがたいことに、今は本格的なスクールに通わなくても、自宅にいながら低コストで学べる環境が整っています。
- 分かりやすい解説動画や講座サイト
- オンラインセミナー・ウェビナー
- 解説記事や入門サイト
私自身、FP1級の勉強では、YouTubeなどの動画講座や一問一答サイトなどオンラインの教材をフル活用しました。通勤時間やスキマ時間も使えるので、「少しずつ積み上げる学び」には非常に向いていると感じています。
また、最近話題の生成AIツールも、上手に使えば心強い味方になります。
- 分からない用語をかみ砕いて説明してもらう
- Excelや資料作成のコツを、その場で質問して教えてもらう
- ニュースやレポートの要約をお願いして、要点だけ押さえる
いつの間にか日々の当たり前となっているスマホの操作のように「完璧さ」より「まず触ってみること」です。 いきなり難しいAIの原理について学ぶ読むより、「この用語を分かりやすく教えて」「このニュースを3行でまとめて」といった、日常レベルの使い方から慣れていけば十分だと思います。
注意点 学びは「頑張りすぎない」方が続く
ここまで読むと、
- 「英語もITも資格も…全部やらなきゃいけないの?」
- 「仕事だけでも疲れているのに、とても無理」
と感じる方もいらっしゃると思います。
結論からいうと、全部やる必要はまったくありません。 むしろ、次の3つに絞り込んだ方が、長続きしやすく、人生にも活かしやすいと感じています。
- お金や働き方に関する「生活直結の知識」
例:年金・税金・医療費・相続の基本、定年後の働き方など → FP3級レベルの知識は、これからの人生設計の土台づくりにおすすめです。 - 仕事や暮らしをラクにするIT・デジタルスキル
例:スマホ・PCの基本操作、Excelの基本関数、オンラインバンキング・行政サービスの使い方など - 「純粋に好き」「楽しい」と思える分野
例:語学、歴史、アート、推し活関連の知識など → 好きなことは自然と続くので、「アップデートの崖」対策としても効果的です。
「役に立つ」だけで学びを選ぶと、苦しくなって続きません。 「生活に役立つもの」と「自分が楽しめるもの」を、バランスよく混ぜるのがおすすめです。
制度を上手に使って学び直しをしたい場合は、教育訓練給付金を使ってお得にスキルアップ|定年前後に学び直しを考える方へも参考になると思います。
FPとうかの場合 ブログ運営も“学びの連鎖”でした
私自身、このブログを始めたことで、かなり強制的に(笑)ITやウェブ周りの情報をアップデートしてきました。
- WordPressの使い方やテーマ設定
- 画像サイズや表示速度、SEOの基本
- 統計データや調査レポートの読み方・活かし方
正直にいえば、最初は「もう頭がいっぱい」「何故できない!?」と思うこともありました。それでも続けてこられたのは、
- 自分が本当に知ってほしい読者像(50代シングル会社員)の顔が浮かぶこと
- 学んだことを記事としてアウトプットできること
- 少しずつでも「できること」が増えていく実感があったこと
この3つがあったからだと思います。
また、書籍『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる』の中で語られていた、「学び続けることが、自分自身だけでなく社会も豊かにする」という考え方にも大きく共感しました。
定年後の日本は、世界的に見ればかなり恵まれた環境です。だからこそ、「せっかくなら、その環境を楽しめるだけの知識や情報を持っていたい」と、今のうちから少しずつアップデートを続けていきたいと考えています。
まとめ「知っている人」より「学び続ける人」に
「アップデートの崖」とは、学びを止めた瞬間から、ゆっくりと世の中との距離が開いていく現象です。
ただし、これは一度落ちたら終わりの崖ではありません。「小さく学び直すこと」さえやめなければ、いつでも登り直せる崖でもあります。
50代の今からできることは、決して特別なことではありません。
- 生活や老後に直結するお金・働き方の知識を少しずつ補強する
- スマホやPC、インターネットサービスを「避けずに触ってみる」
- 興味のある分野の本や動画、講座に、軽く手を伸ばしてみる
- 分からないことは、一人で抱え込まず調べたり、人やツールに聞いてみる
完璧に分からなくてもかまいません。「分かろうとする姿勢」そのものが、アップデートの崖を緩やかな坂道に変えてくれます。
これからも記事を通じて、50代シングル会社員の皆さまが「学びを味方につけて、これからの人生を整えていけるように」お手伝いできればと思っています。
この記事を書いた人
FPとうか
ファイナンシャルプランナー1級/社会保険労務士試験合格者。50代シングル会社員向けに、老後資金・働き方・学び直しなど「これからの人生を整える情報」を発信しています。
▶ このシリーズのまとめはこちら(60の崖と準備まとめ)
学び直しに関心のある方へ
教育訓練給付金を使ってお得にスキルアップ|定年前後に学び直しを考える方へ
「山登り型」じゃなくても大丈夫!“川下り型”で見つけるキャリアの楽しみ方


