友人の会社では45歳、50歳頃に定年後の社内セミナーがあり、キャリアの棚卸しという項目があったそうです。自分の会社でもそれに遅れてそれなりの定年後セミナーの通知がありました。
おぉ、これが話に聞いていた……とは思ったものの、内容に対してなんだか微妙な印象を持ちました。
課題は社会人になってから現在まで経験した業務を書き出し、それに満足度を示した折れ線グラフを作るというものでした。それをもとに出席者同士で意見交換をする形式。正直にグラフを描けば、かなり低空飛行になりそうで、あまり気が進みませんでした。
同年代の同僚も「こんな内容を共有されても・・どうせなら退職金制度の話やマネープランを教えてほしい」と漏らして欠席を決めました。業務多忙を理由に私も参加を見送りましたが、同じような判断をした人は多かったようです。
「どうするか」は自分で決める
とはいえ、いつか会社から「定年後はどうしますか?」と聞かれる日は近づいてきます。充実したセミナーに出ること以上に、自分自身で考え、情報を集め、決断することが重要だと感じました。
そこでまず始めたのが定年に関する内容の本を購入し読書。何かを学ぶにはまず10冊読むといい──そんな話を聞いて、気になるテーマについて片っ端から本を読んでみました。
マネープランがあやふやだった
読んだ本のひとつに『会社も役所も銀行もまともに教えてくれない 定年後ずっと困らないお金の話』(頼藤太希著・だいわ文庫)があります。年金や退職金、再雇用制度など幅広いテーマが丁寧に解説されていて、自分の知識が古くなっていたことに気づかされました。
例えば、郵送された”ねんきん定期便”を見て「65歳からこのくらい貰えるのね」と軽く流していたり、国民年金のみ加入の期間の記録が通算されていない記録だと知っていても訂正せず数年放置していたり……。自分のことになると驚くほど雑になっていたのです。
資産状況も、一応貯蓄や、株、投資信託や純金積立など色々実行していましたので「たぶん何とかなるだろう」くらいのざっくり感で、本気で向き合っていませんでした。
60歳以降の働き方を考える
頼藤先生の本には「いつまで働き続けるのか、計画を立てる」ことの重要性が書かれていました。私自身、前回ご案内したような新型コロナによる“強制的な定年後予行演習”を経験し、健康・経済・社会的つながりの三要素のためにも、働くことが有効なのではと実感していました。
以前は「働くこと=苦行」だと思っていた私が、60歳以降も引き続き「自分の健康のために、そして誰かの役に立つために、そして少々の収入のため働こう」と思うようになったのは、大きな意識の変化です。
自分がしたい働き方
では、どんな働き方をしたいのか考えてみました。やはり現在の週5日、フルタイム(早出や残業の日もあり)、休日は取れるものの自分の都合では決めづらい状態より、決められる自由が欲しいなと思っています。
その一方で、もちろんお金は稼げるに越したことはないですが、定年後は収入面は優先順位はそこまで高くないかな、と思っています。私の優先ポイントは以下の3点でした。
- 時間に余裕があり、無理のない仕事
- 多少の収入より、楽しさや意義を重視
- これまでの経験や知識を活かせる仕事
理想は週に数日ペースで、ゆとりを持って取り組める仕事です。「お金より時間の自由」を重視した仕事にシフトしたいと考えています。
自分の経験を役立てたい
社会保険労務士の資格や企業の人事や社労士事務所での実務経験を活かせる仕事なら、きっとどこかに需要があるはず。
そこに投資・年金・相続などを学んだFPの知識が加われば、さらに貢献の幅も広がるだろうと思っています。
この考えが、FP1級に挑戦しようと思った最初の一歩でした。長年モヤモヤしていた「定年後は働きたくない」が、「こう働きたい」に変わったのは、心の中で大きな変化でした。