FPとうか|1級FP技能士・社労士試験合格
主に50代シングル会社員の定年前後の“気になる不安”に寄り添い、
年金・暮らし・働き方・終活まで制度に基づき解説しています。
実務経験と資格に基づく、わかりやすい情報発信を心がけています。

はじめに|50代で「このまま定年まで働くのかな…」と迷い始めたら

50代になると、ふとした瞬間にこんな気持ちがよぎりませんか。

  • 「今の会社で、いつまで働き続けるんだろう」
  • 「定年後もこのまま働き続けるイメージがつかない」
  • 「お金は心配だけど、体力も気力も落ちてきた気がする…」
  • 「新しい仕事にチャレンジしてみたい気持ちがあるが、老後資金で二の足を踏む」

そんな「もやもや」を抱えたまま日々を過ごしている50代の方は、とても多いと感じています。

この記事では、50代で考えておきたい「定年後の働き方」と「お金の見直し」について、FPとうかの視点から整理します。

いきなり完璧な答えを出す必要はありませんが、「自分はどの働き方パターンを目指したいのか」だけでも一度言葉にしてみることで、将来への視界は開けてきます。

読者の現状整理|よくある3つの不安パターン

まずは、50代の方からよく聞く「定年後の不安」を3つに整理してみます。

① 60歳以降の収入がイメージできない

「定年が近づいてきたけれど、その先の給料がどれくらいになるか分からない」というケースです。

  • 60歳で賃金が大きく下がる
  • 65歳まで再雇用だけれど、年収は現役時代の半分以下
  • 65歳以降の働き方が会社から示されていない

この状態だと、定年後の生活費と収入のギャップが見えず、「とりあえず不安だけ募る」という状況になりがちです。

② 働き続ける体力・気力に自信が持てない

50代も後半に差しかかると、体力や健康への不安も無視できません。

  • 残業や出張が続くと、翌日に疲れが残る
  • 急な体調不良が増えた
  • メンタル面での疲れも蓄積している

「お金のために無理をし続けて本当に大丈夫だろうか」という、心と体の折り合いをどう付けるかが大きなテーマになってきます。

③ 将来必要なお金の全体像が分からない

定年後に必要なお金の目安は、情報が多すぎてかえって分かりづらいのが正直なところです。

  • 「老後資金2,000万円問題」という言葉だけが独り歩きしている
  • 自分の年金見込み額を正確には把握していない
  • 退職金・企業年金・iDeCo・NISAなどがバラバラに管理されている

つまり、多くの方が「働き方」と「お金」の両方がぼんやりしたまま50代を迎えているのです。

FPとうかが考える「定年後の働き方」3パターン

ここからは、定年後の働き方を大きく3つのパターンに分けて整理してみます。

パターン① 65歳までフルタイム寄りで働き続ける

まずは、現在の会社で再雇用などを利用し、65歳前後までフルタイムに近い形で働き続けるパターンです。

メリット

  • 収入の柱を維持しやすく、貯蓄の取り崩しを遅らせられる
  • 厚生年金の加入期間が延びるため、将来の年金額が増える
  • 人とのつながりや役割(ポジション)を保ちやすい

デメリット

  • 体力・健康面の負担が大きくなりやすい
  • 職場環境の変化(若い世代とのギャップなど)でストレスが増える可能性
  • 「今のうちにやりたいこと」を後回しにし続けてしまうリスク

このパターンを選ぶ場合は、健康管理とストレスケアを意識しつつ、「いつまでなら無理なく続けられそうか」という自分なりの基準を決めておくことが大切です。

あわせて読みたい:65歳以降の働き方|50代から備えるキャリア戦略

パターン② 60歳前後で一区切りをつけて、働き方をシフトする

次に、60歳前後で一度「フルタイム会社員」を卒業し、働き方のボリュームを調整するパターンです。

たとえば…

  • 再雇用は利用するが、残業なし・責任の範囲を少し軽くする
  • パート・アルバイト・嘱託など、勤務日数を減らした形態で働く
  • これまでの経験を活かした業務委託・スポットワークなどに切り替える

メリット

  • フルタイムより心身の負担が軽くなる
  • ある程度の収入を確保しながら、自分時間も増やせる
  • 次のキャリア(副業・資格を活かした仕事など)を試しやすい

デメリット

  • 収入がフルタイム時より減るため、家計の見直しが必須になる
  • 会社側の制度やポジションによって選択肢が限られる場合も
  • 社会保険などに加入できず、継続雇用より年金額が少なくなる

補足:この記事は「働き方の選択肢を整理し、どの道を選ぶべきか」をお金の見直しを踏まえて考える事を目的としています。

定年前後に知っておくべき5つのポイントは制度全体のチェックを網羅しているため、併せて読むと全体像がつかみやすくなります。

パターン③ 早めに“リタイア寄り”を意識して、生活コストを下げる

3つ目は、60歳を待たずに「生活規模を少しコンパクトにしながら働き方も軽くする」パターンです。

このパターンは、ある程度老後資金もあるから仕事ばかりでなくてもいいか、とお考えの方もいそうです。

  • 家計の固定費を見直して、月の生活費を下げる
  • 持ち家の活用(売却・賃貸など)も選択肢に含める
  • スポット的な仕事+軽い副業などで、心と体に余裕を持たせる

メリット

  • 早い段階から「時間のゆとり」を実感しやすい
  • 趣味・学び直し・推し活など、やりたい事に時間を使える
  • 暮らしのダウンサイジングを早めにしておくことで、老後の家計不安が減る

デメリット

  • 資産計画が甘いと、後半の資金不足リスクが高まる
  • 「周りより早く仕事を減らすこと」への心理的なハードル
  • 時間があることで、やりたい事にかかる費用が想定より多くなる

このパターンを検討する場合は、60の崖と準備⑥|「資産の崖」減らす不安に負けない資産の使い方などの記事を参照いただき、検討いただくのも良いかもしれません。

資産の役割を整理したうえで、どのタイミングでどれくらい取り崩す前提なのかを明確にしておきましょう。

その試算の際は、資産運用益の見通し(年〇%で運用)は少し厳しめ(債券の利率+1~2%程度)で見積もった方が良さそうです。

お金の見直し|まず押さえたい3つのチェックポイント

続いて、「働き方」を考えるうえで土台となるお金のチェックポイントを3つに絞ってご紹介します。

① 公的年金と退職金の「見込み額」を具体的な数字で把握する

最初の一歩は、「将来どれくらいの収入が見込めるのか」を数字で把握することです。

  • ねんきん定期便・ねんきんネットで公的年金の見込み額を確認
  • 会社の退職金規程や退職金見込額のシミュレーションを入手
  • 企業年金・確定拠出年金(企業型DC)がある場合は、運用残高もチェック

ざっくりでも構いませんので、「65歳以降の毎月の年金収入」と「退職金の総額」を手元のメモに書き出してみてください。

② 月いくらあれば暮らせるのか、「今の家計」と「定年後家計」を分けて考える

次に、「現役時代の家計」と「定年後の家計」を分けて」考えてみます。

  • 現役時代:住宅ローン・教育費・趣味・推し活など
  • 定年後:住宅費・食費・光熱費・保険料・医療費・交際費など

特に50代シングルの場合、「一人暮らしの固定費」をどこまでコンパクトにできるかが、働き方の自由度に直結します。

特に家関連(住宅ローンあるいは家賃)は一番大きい出費かと思われます。

家計の全体像が掴めない方は、前出の「定年前の5つのポイント」のようなチェックリスト形式の記事をご参考に、まずはざっくりの全体イメージをつかむのもおすすめです。

③ 資産を「守るため」だけでなく「生かすため」にも使う視点を持つ

長年コツコツと貯めてきた資産は、もちろん「減らしすぎない工夫」も大切です。ただ同時に、

  • 健康なうちに経験や学びに使う
  • 将来の不安を減らすために保障や備えに回す
  • 心のゆとり(楽しみ・推し活など)に少し回す

といった「生きたお金の使い方」も意識しておきたいところです。

この点については、先ほどご紹介した「資産の崖」減らす不安に負けない資産の使い方の記事ともつながるテーマです。働き方だけでなく、「お金との付き合い方」もセットで見直していきましょう。

落とし穴|「なんとなく今の働き方を続ける」が一番リスク

ここまでいくつかパターンをご紹介しましたが、実は一番リスクが高いのは、

「何も決めないまま、何となく今の働き方を続ける」ことです。

理由はシンプルで、

  • 会社の制度(定年・再雇用・賃金テーブル)が自分にとってベストとは限らない
  • 体力や家族状況の変化があったとき、急な「働けない状態」に追い込まれることがある
  • 「本当はこう働きたかった」という気持ちに気づいたときには選択肢が減っていることが多い

私自身も新型コロナのステイホームで強制的にリタイア後のような暮らしを体感し、危機感を感じる機会が無かったら、「何となく今のままの働き方」を続けていた一人かもしれないです。

だからこそ、50代の今のうちに「自分はどのパターンが実現可能か」「何年後にどんな状態でいたいか」を、一度紙に書いてみることをおすすめします。

FPとうかが考える「50代からのおすすめステップ」

最後に、50代の今からできる3つのステップをまとめます。

ステップ1|「働き方の仮プラン」を決める

いきなり確定版でなくて大丈夫です。まずは、

  • 65歳(あるいはその先)までしっかり働くのか
  • 60歳前後で一度働き方を軽くするのか
  • 早めにリタイア寄りにシフトしたいのか

この3つのどれが今の自分に近いのか、感覚で構いませんので決めてみてください。

ステップ2|「収入と支出」をざっくり見える化する

次に、

  • 65歳以降の年金見込み額
  • 退職金・企業年金などのまとまったお金
  • 現在の貯蓄・投資残高
  • 定年後の毎月の生活費の目安

この4つをノートやエクセルに書き出してみます。細かい完璧さよりも、「ざっくり全体像をつかむ」ことを優先してください。

ステップ3|「今から1ヶ月以内にやること」を1つだけ決める

最後に、近々着手する最初のアクションを1つだけ決めます。

  • ねんきんネットに登録して年金見込み額をパターン別に確認する
  • 会社の人事部に退職金規程・再雇用制度を確認する
  • 家計の固定費(通信・保険・サブスク)を見直してみる
  • 学び直しや資格の情報収集を始める

「いつまでに・何をするか」を決めておくだけでも、将来への不安はかなり軽くなります。

まとめ|働き方とお金をセットで見直すと、50代からの選択肢は広がる

50代で定年後のことを考え始めるのは、決して早すぎません。むしろ、

  • 働き方のボリュームをどうするか
  • どのくらいの収入があれば安心して暮らせるか
  • 貯めてきた資産をどう「生き金」として使っていくか

を考えるには、とても良いタイミングだと思います。

人によっては、老後資金足りないかも・・という方もいるかもしれません。しかし、気づいた今から資産形成や、仮の”年金生活”を体験して固定費削減を意識した生活にすれば、その不安も減らせます。

この記事が、「とりあえず今のまま」から一歩抜け出し、これからの働き方とお金の付き合い方を見直すきっかけになればうれしいです。

この記事を書いた人

FPとうか
1級FP技能士/社会保険労務士試験合格。
国内保険会社・社労士事務所・外資系IT企業の人事部での経験をもとに、
50代シングル会社員の「定年前後のお金・働き方・暮らしの不安」をやさしく整理してお伝えしています。

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