つい先日、堀江貴文さんのX投稿にて「ブータンでは医療費が無料」という一文を目にしました。
具合が悪くなってもお財布を出さずに済むなんて、さすが幸福度の高い国・・と思ったら、ブータンは時期によりますが約3万円/日の入国税がかかるそうです。
その一方で、その投稿を読んだ瞬間、私の頭に浮かんだのは、ある知人の顔でした。
その人は、プライベートでのアメリカ旅行中に突然の腹痛に襲われ、盲腸の手術を受けたのです。場所はロサンゼルスの立派な病院。施設も申し分なかったそうですが、退院時に提示された請求額は――なんと、約300万円。まとまったお金が飛んでしまいます。
極端ですが、海外で入院したばかりに破産したなんて噂も聞いたことがあります。
米国の医療費は「本気で桁が違う」
日本では、盲腸の手術+数日の入院といえば、健康保険を使えば自己負担10〜15万円程度。
ですがアメリカでは、手術費、入院費、麻酔、薬代、諸経費すべて「フルコース」で課金され、200〜300万円超えは珍しくありません。
救急車を呼べば数万円、レントゲンで数万円、そしてちょっと血液を調べるだけで万単位です。
医療費が高いのはアメリカだけの話ではありません。医療費の個人負担が高い国の代表はスイス、ノルウェーなどです。
参考:医療費や自己負担額の世界ランキングから見る世界の医療費【1位アメリカ医療費】(Medifellow)
会社員は健康保険があるから大丈夫?…と思いきや
会社員の多くは、健康保険に加入していて、日本国内では3割自己負担です。
では海外で病気になったとき、それがまったくの無意味かと言えば、そうでもありません。
日本の健康保険には「海外療養費制度」という救済措置が用意されていて、ざっくり以下のような仕組みです。
- 海外で治療を受けた際に一度全額自己負担
- 日本へ帰国後に、同じ治療を日本で受けた場合の標準費用(≠実費)の7割程度が払い戻される
もしもアメリカで入院し300万円ほど自己負担した場合、その医療が日本の標準費用基準(仮に100万円)で再計算された時は、戻ってくるのは約70万円ほどです。
そのため、230万円の差額は、涙とともに自分で支払うしかありません。
注)場合によっては高額療養費の対象になるかもしれないですが、あくまでも「日本の標準費用」がベースで計算されます。
しかも、申請のための書類は英語と日本語の併記が求められ、現地の医師に治療明細を依頼する手間も…。ついでながら明細も有料の可能性もあります。
正直、療養よりも、その後の書類との戦いのほうが過酷なのではと思うほどです。
ついでながら、海外で支払った自己負担分は確定申告の医療費控除の対象となりますが、その上限は200万円です。また、その金額がそっくり返金される訳ではなく、算出された所得税の差額がいくらか戻り、住民税も少々安くなる仕組みです。しかも確定申告でさらなる書類との戦いになります。
海外旅行保険は「自腹地獄」を回避してくれる心強い味方
そこで登場するのが、海外旅行保険です。
空港やネット、旅行会社などで簡単に加入でき、5日間程度の旅行なら2,000円前後で加入できます。
今のアメリカの物価なら、ペットボトルの水を数本買ったくらいの出費です。
しかもこの保険、内容がなかなかに充実しています。
主な補償内容
- 治療費(入院・通院・手術・薬代・検査など)
- 救援者費用(家族の呼び寄せ費用、搬送費、現地での宿泊費など)
- 賠償責任補償(ホテルの備品を壊した、誰かにケガをさせた)
- 携行品損害(スマホを落とした、スーツケースが壊れた)
- 遅延・欠航時の追加費用補償(宿泊費・交通費)
保険によっては「キャッシュレス診療」が可能な提携病院もあり、病院でお財布を出さずに済むというのもありがたいです。救援者費用や遅延、欠航時の追加費用補償もいざという時はかなりの助けになります。
まさに「心の備え」以上の安心感です。
個人賠償責任保険は海外でも使えるのか?
ちなみに、日常生活で起こる「他人への損害賠償」に備える保険、前回の記事でお勧め保険No1の個人賠償責任保険も、契約内容によっては海外でも適用されることがあります。
ただし、「国内のみ」や「日本国内で発生した事故に限る」という契約もあるため、
加入中の保険証券の確認をしてくださいませ。
たとえば、自転車で人にぶつかってしまった、ホテルで備品を壊した、というような事案に対応しているかどうか。
火災保険や自動車保険の特約で付いている方も多いので、一度チェックしてみてくださいね。
最後に|クレジットカード付帯の保険で十分?
「私はクレジットカードの保険があるからいいや」と安心している方もいるかもしれません。今までは自分もそう思っていて、出張以外で海外旅行保険に加入することは皆無でした。
ですが、その“クレカ保険”――実は落とし穴があったのです。
補償金額が100〜200万円程度と少なかったり、
そもそも保険が有効になるのは「旅行代金をそのカードで支払った場合に限る(利用付帯)」という条件付きのことも。
そのあたりの注意点と、おすすめの活用法については――
次回、「クレカ付帯保険の賢い見極め方」編で、じっくりご紹介します。
まとめ|保険は、準備するから「使わなくて済む」
海外で病気やケガなんて、できれば避けたいことですが、避けたいことほど、なぜか起こってしまうのが人生の不思議です。(”マーフィーの法則”なんてありましたね。)
ましてや年齢層が上がるにつれ、今までは無かった思わぬ体調不良や、疲労で事故やうっかり物を壊してしまうなんて事もありえます。
でも、「もしもの備え」があるだけで、不安もずいぶんと和らぎます。
数本のミネラルウォーター分の保険料で、命と財産と旅の思い出を守れるのなら――
今更ながら、旅行の必需品と言ってもよいのではないか、と思っております。