教育訓練給付金を使ってお得にスキルアップ|定年前後に学び直しを考える方へ
主に50代シングル会社員の定年前後の“気になる不安”に寄り添い、
年金・暮らし・働き方・終活まで制度に基づき解説しています。
実務経験と資格に基づく、わかりやすい情報発信を心がけています。
はじめに|教育訓練給付金は「50代の学び直し」を大きく後押しする制度です
50代になると、「定年後も働けるスキルを身につけたい」「資格を活かして第2のキャリアをつくりたい」と思う場面が増えます。 しかし、学び直しには費用がかかり、踏み出しづらいと感じる方も多いはずです。
そんな時に活用してほしいのが教育訓練給付金。在職中だけでなく退職後も利用でき、条件次第では失業給付(基本手当)と併用できる場合もあります。
2025年10月からは教育訓練休暇給付金という新制度も始まり、さらに使いやすくなっています。
読者のお悩み整理
- 50代から学び直しをしたいが費用が気になる
- 会社を辞めた後でも使える制度なのか不安
- どの資格が対象なのか分からない
- 会社に知られずに手続きしたい
- 資格を取ったとして、本当に役立つのかイメージできない
そんなお悩みに、教育訓練給付金の制度がお役に立つかもしれません。
FPとうかの解説|教育訓練給付金とは何か?
教育訓練給付金は、一定期間雇用保険に加入していた方に対して、受講料の一部を国が支給する制度です。 対象講座は厚生労働大臣が指定しており、その数は約17,000講座にのぼります(出典:厚生労働省)。
制度は3つの区分に分かれます
- 専門実践教育訓練 実務に直結する高度な資格や講座が対象
- 特定一般教育訓練 実務で活かせる講座や資格が対象
- 一般教育訓練(上限10万円) 一般的なスキル系資格
高度なスキルほど給付額が高くなる傾向にあり、特にIT分野は今後ますます価値が高まると感じています。
図表|講座区分と給付額のイメージ
区分ごとの給付額の上限、また具体的な対象資格を記載しました。
具体的な資格、講座は毎年4/1をめどに見直しをされています。検討される際には厚生労働省のHPで最新情報を確認してください。
| 区分 | 給付額の上限(年間) | 主な対象資格 |
|---|---|---|
| 専門実践教育訓練 | 56万円 | 看護師、介護福祉士、法律・医療系高度資格 |
| 特定一般教育訓練 | 25万円 | 社労士、行政書士、FPなど |
| 一般教育訓練 | 10万円 | 簿記、ITパスポート、PCスキルなど |
退職後でも利用できる?注意点は?
はい、退職後も利用できます。 ただし、注意点は次のとおりです。
- 退職後1年以内に受講開始が必要
- 給付には受講前の手続きが必須(後からでは申請不可)
- 受講期間中に雇用保険に加入している必要はない
2025年4月からの大きな変更点
2025年4月からは、以下の講座であれば失業給付(基本手当)と併用可能になりました(出典:厚生労働省)。
- 教育訓練給付金対象講座
- 公共職業訓練
- 短期訓練受講費対象講座
- 上記に準ずると定められた講座
ただし、すべての講座が併用OKではない点に注意。 受講前に必ず厚生労働省のHPで最新情報を確認したうえで申請しましょう。
失業給付については、定年退職者が失業給付で失敗しないために──50代が知っておきたい3つの注意ポイントでご案内しています。
2025年10月開始|教育訓練休暇給付金とは?
2025年10月1日から教育訓練休暇給付金がスタートしました。(出典:厚生労働省)。
これは、働きながら学ぶ人を支援する制度で、有給休暇とは別に学習目的で休暇を取得した際に給付を受けられる仕組みです。
勤務しながらスキルアップを図りたい方、退職前に資格を取って備えたい方にとって、心強い制度になるはずです。
一つだけ注意事項があり、それは教育訓練休暇給付金を受け取ると、そこで被保険者期間がリセットされること。
退職後に失業給付などを受ける際は、その被保険者期間は教育訓練休暇給付金の受給後から計算されることになります。
申請は会社に知られずにできる?
結論:教育訓練給付金は会社に知られずに申請可能です。 教育訓練給付金の手続きは完全に個人で行います。
ただし、次の点にだけ注意が必要です。
- 「雇用保険被保険者証」が必要(会社に預けている場合はハローワークで再発行可能)
- 期限・書類不備があると支給されない
- 郵送・電子申請も可能だが、最新ルールの確認が必須
なお、教育訓練休暇給付金の方は、会社勤務中に教育訓練のための無給求職を取得して申請するものですので、会社に届け出することが前提です。
教育訓練給付の注意点
教育訓練給付金は比較的給付額が多めのお得な制度ですが、その分手続きや申請に制約があります。以下のような事にご注意いただき、利用してください。
- 「受講前の手続き」が必須(開始後では遅い)
- 途中退校すると給付対象外になる場合がある
- 講座の修了認定基準(出席率・課題提出など)が厳しい場合あり
- 指定講座は変更されることがあるため、最新情報が必須
落とし穴|資格取得だけで満足しないこと
資格は取って終わりではなく、「その後どう使うか」のほうが重要です。
例えば、私の知人は定年後に教育訓練給付金を利用しフラワー装飾技能士を取得しましたが、現場の重労働に体力が追いつかず資格を活かした再就職は断念されたとのこと。
学ぶ前に働き方・収入イメージ・体力との相性まで考えることが大切だと感じています。
学び直しは、定年後の役割づくりにも直結します。「学びを止めると起きる変化」は60の崖と準備⑦|アップデートの崖でまとめています。
まとめ|50代こそ「小さな学び」が未来を変える
教育訓練給付金は、学び直しのハードルを大きく下げてくれる制度です。 退職後も利用でき、2025年以降は併用制度や休暇給付金も始まります。
一番大切なのは、資格をどう生かすかを考えながら学ぶこと。 小さなスキルが収入の柱になったり、人とのつながりにつながったり、50代以降の暮らしを支えてくれる可能性があります。
もし「セカンドキャリアに不安がある」「何か新しいことを始めたい」という気持ちがあれば、まずは制度を知ることから始めてみませんか。
この記事を書いた人
FPとうか
ファイナンシャルプランナー1級/社会保険労務士試験合格者。 50代シングル会社員向けに、老後資金・働き方・学び直しなど「これからの人生を整える情報」を発信しています。
お知らせ本記事は制度を正確に伝えるため、厚生労働省公開情報をもとに作成しています。
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