学びとキャリアの再設計

教育訓練給付金を使ってお得にスキルアップ|定年後に学び直しを考える方へ

前回は退職後に申請する失業給付についてご案内しましたが、定年後に何か新しいことを始めたい――そう思っても、学び直しや資格取得には費用がかかり、躊躇してしまうこともあります。そんな時に知っておきたいのが「教育訓練給付金」です。実はこの制度、在職中だけでなく退職後も利用できるうえに、2025年4月からは条件を満たせば失業給付と併用も可能になりました。

教育訓練給付金とは?

教育訓練給付金は、雇用保険に一定期間加入していた方が対象の「学び直し支援制度」です。厚生労働大臣が指定する講座(なんと約17,000件!)の受講費用の一部が戻ってくる仕組みで、次の3段階に分かれています。

  • 専門実践教育訓練(上限年間56万円)
    看護師、介護福祉士、法科大学院など、実務に直結するハイレベルな資格が対象。
  • 特定一般教育訓練(上限25万円)
    社会保険労務士、行政書士、FPなど比較的身近な専門職が中心。
  • 一般教育訓練(上限10万円)
    簿記やITパスポート、医療事務などスキルアップ系資格が対象。

難易度が高い、あるいはそのスキルを持った方を求められているほど給付額も上がる傾向にあります。ついでながら、IT関連スキルは、今時はどんな職種であっても持っているとかなりお役立ちでは、と思います。

参考: 教育訓練給付金制度(厚生労働省)

退職後でも利用できる?注意点は?

はい、退職後でも利用可能です。ただし、原則として「退職後1年以内」に受講開始する必要があります。失業給付との併用については、2025年4月から以下の条件に該当する講座であれば、給付制限なしで基本手当(失業給付)の受給も可能になります。

  1. 教育訓練給付金対象の講座
  2. 公共職業訓練
  3. 短期訓練受講費対象講座
  4. 上記に準ずると厚労省が定めたもの

「講座であれば何でもOK」ではない点が要注意です。講座を検討する時点で、必ずハローワークや厚生労働省のサイトで対象かどうか確認しましょう。

申請は会社に知られずできる?

在職中から勉強しようと思っているけれど「会社にはナイショで資格取得の準備を進めたい」という方も多いと思いますが、教育訓練給付金の申請は個人で行うため、会社を通す必要はありません。

ただし、「雇用保険被保険者証」が必要となる場合があり、多くの方は会社に預けているかもしれません。その場合でも、実はハローワークで再発行手続きが可能です。

また、給付申請のルールや期限はかなり細かく定められています。以前は窓口に手続きに行く必要がありましたが、郵送や電子申請も可能になっています。しかし、油断せずに最新の公式情報を確認して進めましょう。

資格取得をゴールにせず、その後を見据えて

教育訓練給付金を使って資格取得を目指す方にぜひ意識してほしいのが、「その後どう活かすか」です。

たとえば、私の知人で定年後に「フラワー装飾技能士」講座を受講し、見事資格を取得された方がいました。しかし実際の現場では、重いバケツを持ったり冷えた部屋で作業したりと、想像以上に体力を要する仕事だったそうで、結局その道には進まれませんでした。

何事も経験しないと分かりませんが、「資格を取り、それを活かして働いていただく」事を目的とした制度ですので、資格を取っただけで終わってしまうのは勿体ないです。

訓練の終了/資格取得の後、実際に仕事にするまでのプランも見据えて訓練に入ってくださいませ。

小さな仕事が暮らしを支える“第2の人生”

大切なのは、学びとスキルをどのようにその後の仕事や暮らしに結び付けていくか。少しでも収入につながり、社会との接点が持てる活動は、孤独リスクの軽減にもつながります。特にシングルの方にとっては、学び直しによる再スタートが、生活にも心にも良い影響を与えてくれるはずです。

定年後はこんな事をやってみたい・・と考えられている方は、制度を上手に活用して、自分らしいセカンドキャリアを描いていきましょう。

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