それなりの値段の財布を使うと将来お金持ちになるという「年収200倍の法則」。聞いたことはありますでしょうか。
最近読んだ「財布は踊る」(原田ひ香 著、新潮文庫)の中で主人公の専業主婦がルイ・ヴィトンの財布が欲しいため、二年間の節約生活を続けた末、ハワイの店で財布を買うことになった際に、店員より「一説には年収の二百倍って言いますよね」と言われたこともあり、結局当初の想定よりも値段がはる、大きな長財布を手に入れるという場面がありました。
それを読みながら、ルイ・ヴィトンの同じ種類の財布が気に入っていて、何代も買い換えて使い続ける友人がいることを思い出すのと同時に、年収は財布の値段の200倍説、懐かしい・・と思いました。
長財布を使うとお金持ちになる説、どこから?
2010年に「稼ぐ人はなぜ、長財布を使うのか?」(亀田潤一郎著 サンマーク出版)で記載されていた、年収は財布の値段の200倍説、またお金持ちが長財布を使われていたエピソードが書かれていたことを懐かしく思い出しました。
ちなみに長財布を使うとお金持ちになるという考えは、一般的には風水や心理的な信念に基づいているのだそう。風水では、お金を扱う「器」や「入れ物」によって金運が左右されるとされています。長財布はお札を折らずにまっすぐ入れることができるため、お金にとって心地よい場所とされ、結果的に金運がアップすると信じられています。
確かにお釣りで受け取る紙幣も、やたら細かく折られている物よりピン札の方が気持ちいい気がします。(海外でたまに受け取る、破れていない状態を保っているだけで本当に使えるのか不安になるようなクオリティの紙幣は、日本ではまず見かけないですが。)
個人的にはこの本の影響で長財布を使い始めてはや十数年。財布に入れるお札の向きもついつい揃えてしまう癖も、この本の影響かもしれないです。
実際にお金持ちは長財布を使っていた?
友人たちに、リアルでお目にかかった方のうち一番のお金持ちは、本当に長財布だったのか聞いてみました。意外にも”財布を持っていなかった”という話がちらほら。個人的にもお目にかかった中で一番のお金持ち(とある企業の創業者)も財布はお持ちではなかったです。紙幣を半分に追った束も、小銭も部屋のその辺に置きっぱなしでした。
友人の証言でも一番のお金持ち(やはり、とある企業の創業者)は財布無し、紙幣はマネークリップを使用、小銭はポケットに直接入れていたとのことでした。
突き抜けたお金持ちになると、逆に現金を使う機会が無いということもあります。専用の移動手段があり、飲み物なども周囲が手配してくれる。会食をセットしたり、されたりでその支払いも請求書、あるいはカードといった次第になってきます。
また、おそらく金銭感覚の違いもありそうです。資産のうち株式については、株価が変動すると日々何千万や億単位で個人の資産額が変わってきます。そちらに比べると少々の現金の事はあまり気にしていない気がしました。
ついでながら、勤め人の方で役職が高く、当然収入も高く、さらに、そもそもお勤めする必要はないよね・・?くらいのご実家がお金持ちな方や、投資でかなり資産を築いたタイプのお金持ちであっても、財布のタイプは色々で、確かに長財布は多めだった記憶です。ただ、財布を持っていない方は記憶の限りでいらっしゃいませんでした。
結論:長財布を使うとお金持ちになるのではなく、お金持ちが長財布を使うこともある(突き抜けたお金持ちは案外財布を持っていないかも?)
キャッシュレス化で変わる財布事情と対策
突き抜けた大金持ちでない者も、このキャッシュレス社会になり、財布のトレンドも小型化しています。
ルイ・ヴィトンを何代も買い替えていた友人も、気がついたら違うブランドの小型財布に変わっていました。若い世代では100均財布と呼ばれる、いわゆる小型のポーチに紙幣や小銭を入れて持ち歩いていたりします。財布を忘れてもキャッシュレス決済があるからそこまで不安にならないのだとか。
キャッシュレス化されると、使った記録が単なる数字となっていきます。そうすると、使った感覚がなくなってしまい、つい浪費しがちな傾向となります。そんな中で大事なのは使ったリアルを意識することです。
まずはカードなどの支払い記録を確認し、どれだけ使ったのかをきちんと把握すること。気が付いたら使いすぎとならないよう、記録を見るだけでなく、何に使ったのか、本当に必要だったのかといった再確認が必要だと思います。
もう一つ「稼ぐ人はなぜ、長財布を使うのか?」の著者、亀田潤一郎さんが提案されていたのは、最近、無駄遣いを自覚しているのなら、あえてアナログ方式に徹することです。
具体的には支払いを現金で行い、長財布と小銭入れを分け、お札と小銭のしっかりとしたリアリティを確保する方法です。さらに小銭については1円と5円は募金、500円は貯金に回し、残りの10円、50円、100円を小銭入れに入れて日々の支払いに使う方法がお勧めとのことです。
キャッシュレス化しているとはいえ、現金を使う機会はまだあります。デジタル時代にアナログな部分を組み込み、使った実感を持ってみることも大事かと思います。
財布より大事なマネーリテラシー
最初に話題にしました「財布は踊る」には、奨学金の返済に苦しむ人や、株で一攫千金を狙い大損して人生を狂わすようなシビアな状況の方が出てきて、意外にありえそうな落とし穴なところが却って考えさせられる内容です。
その中で一番びっくりなのは、長年のカードのリボ払いでいつの間にか200万円超の借金を作っていた主人公の夫のエピソード。その借金返済のため、主人公は折角手に入れた新品のルイ・ヴィトンの財布を手放す羽目になります。
読んでいて主人公の夫の無自覚ぶりに恐怖を感じたものですが、実際に自分の身近にそんな人がいないだけで、世間的にはよくありそうな話です。あとはカードキャッシングをATMと同等に考えてしまう人もいそうです。
こうなると、キャッシュレス化の影響でついつい使いすぎる話と深刻度がだいぶ違ってきます。
この本を読んで、マネーリテラシーを高める教育は必要なのではないかな・・と改めて思いました。いくらの、どんな形の財布を使うかよりも、その知識の方がお金持ちにより近づけると思います。
FP3級でもリボ払いの話は出てきます。前にもどこかで書きましたが高校生は全員FP3級程度の知識を身につけることを必須としてもいいのでは、くらいに思っております。自分も高校生くらいの時に知っておきたかったものです。