定年前後のマネープラン

公的年金の繰り上げ受給を検討するなら?──向いている人・注意点を徹底解説

前回は公的年金の繰り下げ受給で年金額を増やす方法をお伝えしましたが、逆に、金額が減ったとしても65歳より前に年金を繰り上げ受給したいという方もいらっしゃると思います。
繰り上げ受給に向く人、向かない人と注意点についてご案内します。

繰り上げ受給の基本について

公的年金は基本的に65歳から受給が始まりますが、60歳から月単位で「繰り上げ受給」ができます。ただし、1ヶ月早めるごとに0.4%、年単位では約4.8%の減額が一生続く点には要注意です。

例えば、65歳から年間180万円(15万円/月)の年金を受け取る予定の方が、1年繰り上げると年間171万3600円(14万2800円/月)になります。

なお繰り下げ受給と違い、繰り上げの請求は「基礎年金と厚生年金の両方」で手続きをしないといけません。

参考:年金の繰り上げ受給(日本年金機構)

繰り上げ受給のデメリット──取消不可・他制度との関係

繰り上げを選ぶ際には、日本年金機構が提示する13の注意点を確認すべきです。(上記の参考リンクより参照できます。)中でもシングル会社員が注目すべきは以下の4つです。

  1. 任意加入ができなくなる:年金額を増やすために60歳以降の任意加入を検討していた方は、繰り上げすると不可能になります。
  2. 失業給付と重なると損:雇用保険の給付を受けている間に繰り上げ請求すると、年金の一部が支給停止されることがあります。
  3. 社会保険加入時に年金減額:厚生年金に加入対象の仕事をしていると、年金が減額または停止されることがあります。
  4. 障害年金が受け取れない:繰り上げ後に障害状態になっても、障害年金の請求ができません。

特に④については、65歳より前の健康リスクを考えると慎重になるべきポイントです。障害の状態によりますが、状態が重いほど受給額が多くなります。

繰り上げ請求が向いているのはこんな人

以下のような条件に当てはまる方は、繰り上げ受給が選択肢となるかもしれません。

  • 現在働いていない、またはスポットワーク程度
  • 雇用保険の給付が終了している
  • 障害年金の請求リスクが低いと判断している
  • 早期に現金収入が欲しい
  • 資産が充分あり、年金に頼らなくてもよい

また、資産運用に自信のある方は「繰り上げでもらった年金をNISA等で運用すればむしろ得」という選択もありえます。

実際に「50代から輝く!幸福寿命を延ばすマネーの新常識」(田中 彰一著、日本経済新聞社)という本で”「年金60歳繰り上げ受給」、実は理にかなう”という項目もあり、なかなか目にウロコです。ただし、運用上手な方向けだなと思っております。

繰り上げ請求後は取消できない!

13の注意点のうち、個人的に最も気になるのは「繰り下げ請求後は取消ができない」こと。
わざわざ書くという事は、取消したいという申し出が意外とあるのでは・・?と思ったりします。

一度年金を繰り上げ請求すると後戻りできないため、将来状況が変わっても柔軟に対応できない点は大きなリスクです。

私の場合は?──現時点での判断

私自身は、60歳の定年で継続雇用を選択しなかったとしても、繰り上げ支給は現時点では検討していません。障害年金を受けられなくなるのもリスクですし、早期に受給して資産運用に回し、素晴らしいリターンが得られるほどの運用上手ではないからです。

65歳から受給、または数年程度繰り下げの方向で検討しつつ、会社員卒業後はFPとしての活動で柔軟に働き、収入を得ていけたらと思っています。

まとめ:繰り上げ受給向けは両極端

繰り上げ受給向けなのは、65歳が待てず現金収入が急ぎ必要な人か、あるいは資産が充分あり、運用にも自信がある方のどちらかという両極端なケースが該当しそうです。

誰にとっても正解は異なります。いつから年金を貰うのかは、ぜひ今後の生活プラン、働き方、健康状態などを見据えて、冷静に判断してください。

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FPとうか
1級ファイナンシャル・プランニング技能士・社会保険労務士試験に合格 TOEIC915点取得 会社員として働きながら、お金や働き方に関する情報を発信中。「人生後半の不安をなくすお金と制度の知識」をモットーに、50代シングル会社員の方々に向けて、老後資金・年金・孤独対策・終活・働き方の情報をお届けしています。 生命保険会社や外資系IT企業での人事業務、社会保険労務士事務所での勤務を通じた実体験と、資格を活かした「具体的で実践しやすい情報」をお届けします。

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