定年後に「失業給付をもらおうかな」と考えている皆様へ。雇用保険の基本手当を受ける際に、特に注意しておきたい3つのポイントをご紹介します。
- ”働く意思と能力”が無いと失業給付は貰えない
- 失業給付は1年以内に貰いきろう、あるいは延長
- 失業給付は65歳少し前の退職の方がお得、でも早まらない!
1. 「働く意思と能力」が求められる
まずは世に”失業給付””失業手当”と言われる物ですが、今回ご紹介するのは雇用保険の求職者給付のうち「基本手当」というものになります。
失業給付は、退職すれば自動的に受給できるものではありません。厚生労働省によれば、以下の3条件を満たさないと対象になりません:
- 積極的に就職しようという意思
- いつでも働ける健康状態や環境
- 職がなく、求職活動していること
たとえば「ちょっと体調が悪いのでしばらくのんびりします」と言ってしまうと「失業状態」とみなされません。体力に不安がある場合でも、「体力に不安があり通勤がつらいので自宅から通いやすい条件で仕事を探したい」と伝えれば、働く意思ありと評価されるでしょう。
参考: ハローワークインターネットサービス(厚生労働省)
2. 受給は“離職日の翌日から1年以内に完了”が原則
失業給付には「受給期間」があります。原則として離職した翌日から1年以内に受給を完了しなければ、余った日数は失効します。
例)被保険者期間20年以上の場合、基本手当は最大150日です。定年退職の場合、給付開始までの待期(7日)+制限期間(2か月)等含めると合計で217日ほどが必要です。申請までの書類準備やハローワーク処理時間を含めると、1年はあっという間です。
- 長期旅行を希望する、あるいは体調不良でしばらく療養するなら、事前に延長手続きを(退職から60日以内)
- 失業給付の書類を受け取ってからダラダラ過ごしていると、受給期限が切れて損をするリスクがあります
ちなみに、退職後に会社がハローワークに手続きに行き、手続きが終了した後、失業給付に必要な書類が自宅に郵送されます。早ければ手元に数日で届きますが、事情によっては少し時間がかかる可能性もあります。2週間程度はかかると思っておいた方が良さそうです。
3. 「65歳を迎える直前」で退職すれば大得…でも早まらない
雇用保険の基本手当は、65歳未満の方が圧倒的に有利です。以下はモデルケース(給付上限日額の場合=2024年8月の基準):
年齢区分 | 日額 | 支給日数 | 合計額 |
---|---|---|---|
65歳未満 | 7,420円 | 150日 | 1,113,000円 |
65歳以上 | 7,065円 | 50日 ※一時金 | 353,250円 |
失業給付だけを比較しますと、65歳の誕生日の2日前までに退職する方が得になります。(何故なら、65歳の誕生日の前日は”65歳に達した日”という扱いだからです。)上記モデルケースの場合、その差は約76万円にもなります。
ただし、これだけで「早く辞めた方が得」と判断するのは危険です。会社によっては、定めた退職日まで働いた方が、退職金の計算や、最後の賞与の対象になる/ならないの線引きがされているケースもあります。
また、たった数ヶ月程度の違いとはいえ、厚生年金も加入しているほど年金額は増えます。
65歳での定年の日、あるいは定年後再雇用の終了日が65歳の誕生日以降(月末や年度末)となっている場合、どちらが得か総合的に判断して決めてください。
まとめ:3つの注意点をクリアすれば安心
失業給付は、とにかく会社を辞めた状態であれば即貰えるものではないので、ご注意くださいませ。
- ハローワークでは働く意思・能力を明確に伝える
- 受給は離職後1年以内に完了する
- 65歳前後の給付差を意識しつつ、制度・会社の条件を総合的に比較して判断
定年後の生活設計に失業給付は大きなサポートになります。迷ったら、会社やハローワークあるいはファイナンシャルプランナーにご相談ください。ちょっとした違いだけで、数十万円単位の違いが生まれます。
次回は、資格やスキルを身につけて定年後の新たなチャレンジにつなげようと考えている方向けにハローワークから支給されるの「教育訓練給付金」をご案内します。