最近放送されているドラマ「続・続・最後から二番目の恋」の中に、妙に印象に残ったシーンがありました。
三田佳子さん演じる、主人公の母親を中心とした高齢女性の仲間38人が、毎年1万円ずつを出し合って共同の口座に積み立てているのです。そして約束は一つだけ──「最後に生き残った人が総取りする」。
※ちなみに、ドラマの設定では生存者は現在34名らしいです。
思わず笑ってしまう話ながら、「あれ、これってどこかで聞いたような…?」と思い出しました。
それはFP試験でも出てくる「トンチン年金」なのです。
トンチン年金とは?──“長生きした人が得をする”個人年金
「トンチン年金」とは、加入者が拠出した資金をもとに、長生きした人ほど多く年金がもらえる仕組みの年金保険です。
語源は17世紀のイタリア人銀行家「ロレンツォ・トンティ」による制度(トンチン方式)から来ています。
日本での保険商品もあり、死亡返戻金を極端に少なくする代わりに、長寿であるほど給付金が増える「長生き得」となっている設計が特徴です。
トンチン年金のメリットとデメリット
✅ メリット
- 長生きすることで年金が増える(長寿リスクに対応)
- 終身年金型の商品が多いため、安心して老後を過ごせる
- インフレに強い年金設計(年金額が逓増するタイプも)
- 受取開始年齢を遅らせるほど有利になる設計もあり
⚠️ デメリット
- 早期死亡時は“払い損”になる可能性が高い
- 死亡返戻金がない/少ないため、相続対策には不向き
- 途中解約で元本割れリスクがある
- 高額な保険料(月額4〜5万円が一般的)で経済的余裕が必要
なお、トンチン年金の損益分岐点は平均寿命より少し上の年齢だと言われています。
とにかく、得をするには長生きが大事です。早く亡くなると折角払い込みをした保険料が他の長生きな誰かに持っていかれてしまうのです。
どんな人に向いている?
- 90歳以降も元気に過ごしたい長寿志向の方
- インフレや長寿に備えたい中高年
- 公的年金だけでは不安な方の上乗せ策として
もしかしたら、ちょっと投資が苦手な、長寿家系のシングル会社員の方には、老後対策の検討策の一つにもなりそうです。
トンチン年金は死亡返戻金が少ないため相続対策には向きませんが、特にお金を残す子孫などいないシングルであれば、別に気にする必要もありません。
例えば定年時に受け取る退職一時金です。運用上手な方はそれを元手に投資をして資金を増やせるかもしれないですが、退職金を元手に慣れない方が急に投資デビューをするより、保険契約に任せておいて、長生きすればするほど多く貰える安心感を得ておくのも一つの手段かもしれないです。
次回後編では、実際に日本で販売されているトンチン年金商品の内容や、加入状況・年齢層、そして個人的な準備の話を交えてさらに深掘りします。