定年後の生活、実家に戻る・地方移住はあり?|シングル60ガイド
主に50代シングル会社員の定年前後の“気になる不安”に寄り添い、
年金・暮らし・働き方・終活まで制度に基づき解説しています。
実務経験と資格に基づく、わかりやすい情報発信を心がけています。
シングルの定年前後は、ひとりだからこそ迷いやすいもの。
「シングル60ガイド」は、定年前後によくある疑問について、
100の質問と回答で整理したQ&Aシリーズです。
「正解を決める」のではなく、「自分で判断するための考え方」を大切に、
FPとうかの視点でわかりやすくまとめています。
定年後は実家に戻るか、自然の多い地方へ移住するのもいいかなと思っているんだ。
新しい暮らしを考えるのは楽しみだよね。でも、実際に暮らすと、想定と違うこともあるよ。
何を確認しておくといいかな?
交通や買い物、医療、人付き合いかな。できれば暑さや寒さが厳しい季節にも滞在してから検討してみよう。
なぜ実家暮らしや地方移住を考えるの?
前回は、住まいは現役世代のうちに検討に入った方が良いとお勧めしました。
今回は、都心部で居住、働いていた方が、定年を機に地方の実家に戻る、あるいは地方移住を検討されるイメージでお伝えします。
都会での暮らしに疲れを感じた人には、地方でのゆったりした生活が魅力的に見えるかもしれません。
ただし、地方での暮らしは、日常の移動方法、買い物や通院のしやすさ、地域の人との距離感、住宅の管理など、生活全体が変わります。
特に長い間、故郷を離れていた場合、昔の記憶と現在の環境が同じとは限りません。
以前は近所にあった店や病院がなくなっていたり、公共交通の便が変わっていたりすることも考えられます。
また、旅行で訪れたときには心地よく感じた場所でも、日常生活になると不便さが見えてくることがあります。
定年後の住まいは、景色や住居費だけではなく、「一人で無理なく生活を続けられるか」という視点で考えることが大切です。
実家へ戻る場合の特徴
住み慣れた地域へ戻る安心感がある
実家へ戻る場合、土地勘があり、地域の雰囲気をある程度知っていることは安心材料になります。
親族や昔からの知人が近くにいれば、いざというときに連絡できる相手が増える可能性もあります。
実家を所有している場合は、新しく住宅を購入するよりも、住まいにかかる初期費用を抑えられることがあります。
メリット
- 土地勘のある地域で暮らせる
- 親族や昔からの知人が近くにいる場合がある
- 実家を利用し、新たな住宅取得費を抑えられる可能性がある
注意点
- 長く離れていると、地域の環境や人間関係が変わっている
- 固定資産税や維持管理費は引き続きかかる
実家があるからといって、住居費がまったくかからないわけではありません。
屋根や外壁、水回り、給湯設備などの修繕が必要になる場合があります。特に長期間空き家だった場合は要注意です。
家が広いと、掃除や庭の管理、防犯、害虫、害獣への対策が負担になることもありそうです。
昔の人間関係がそのままとは限らない
実家へ戻れば、昔の友人や近所の人と、気兼ねない交流ができると期待するかもしれません。
しかし、子供時代と定年前後の大人では地域での役割も変わり、地方では50‐60代は十分に若手の部類です。
シングルですと、昔のよしみで気軽に消防団や地域の役員、ちょっとした頼まれごとなど、様々な依頼がありそうです。
早いうちに地域の状況を把握する方が良さそうです。
地方へ移住する場合の特徴
希望する暮らしを選びやすい
地方移住では、自然の近くで暮らす、家庭菜園を楽しむ、海や山の近くに住むなど、自分が希望していた生活を実現できる可能性があります。
メリット
- 自然や静かな環境の近くで暮らせる
- 新しい生活や人間関係を始めるきっかけになる
注意点
- 車がなければ生活しにくい地域もある
- 買い物や通院の選択肢が限られることがある
- 地域独自の慣習や人間関係になじめるとは限らない
「地方」という言葉で一括りにしても、生活環境は地域によって大きく異なります。
県庁所在地に近い地方都市と、公共交通の少ない山間部では、暮らし方も必要な費用も違ってきます。
生活費が必ず安くなるとは限らない
地方へ移住すれば、老後の生活費を大きく減らせると考える人もいます。
住宅費や食費を抑えられる場合はありますが、そのほかの支出が増える可能性もあります。
例えば、車を所有する場合は、購入費、保険料、税金、車検、ガソリン代などがかかります。
住宅が古ければ、修繕費や冷暖房費が増えることもあるでしょう。
都市部へ定期的に出かける場合は、交通費や宿泊費が必要になることもあります。
移住前の家賃と移住後の住宅費だけを比べるのではなく、車、医療、交通、住宅管理などを含めた年間の支出で考えることが大切です。
移住前に確認したい生活環境
車が使えなくなった後も暮らせるか
地方では、自家用車があれば問題なく生活できる地域も多くあります。
さらに、運転を控える時期が来ても暮らせるかを確認しておきたいところです。
- スーパーや病院まで歩いて行けるか
- バスや電車はどのくらいの頻度で運行しているか
- タクシーを呼びやすい地域か
- 宅配やネットスーパーを利用できるか
地図上では近く見えても、坂道が多かったり、歩道が少なかったりすることがあります。
実際に現地を歩き、日常の移動を自分の体で確かめてみましょう。
医療や買い物を無理なく利用できるか
若いうちは、病院が多少遠くても気にならないかもしれません。
しかし、年齢を重ねると、定期的な通院や薬の受け取りの頻度が増えることになります。
近くに診療所があるかだけでなく、専門的な診療や入院が必要になった場合に、どこへ行くのかも確認しておくと安心です。
また、日常の買い物についても、大型スーパーの有無だけではなく、食品や日用品を少量ずつ買いやすいか、配送を利用できるかを見ておきましょう。
地域の人との距離感が自分に合うか
地域によっては、住民同士のつながりが強く、行事や共同作業への参加を求められることがあります。
人との交流を楽しめる人にとっては安心につながりますが、干渉されることが苦手な人には負担になるかもしれません。
物件だけを見て決めず、地域の行事や自治会の活動、近所付き合いの程度についても確認しておきましょう。
ベストシーズンとワーストシーズンを体験する
移住先を訪れるときは、気候がよく、景色の美しい時期を選びたくなります。
しかし、定年後の住まいとして考えるなら、過ごしやすい季節だけを見て決めるのは避けたいところです。
夏の暑さや湿気、冬の寒さや積雪、台風の時期、観光客が少ない時期など、生活が厳しくなりやすい季節も確認しましょう。
観光シーズンには店や交通手段が充実していても、季節外には店は閉まり、バスの運行本数が減る地域もあります。
可能であれば、次のような方法で試してみましょう。
- 季節を変えて複数回訪れる
- ホテルではなく、生活設備のある住まいに滞在する
- 観光地だけでなく、スーパーや病院、住宅地を歩く
- 朝や夜、平日と休日の様子を確認する
普段の生活に近い過ごし方をすると、暮らしやすさを判断しやすくなります。
シングルが考える移住の3つのポイント
ポイント①:体力のある現役のうちに具体的に確認する
実家への引っ越しや地方移住には、物件探し、荷物の整理、修繕、契約、引っ越しなど、多くの作業が伴います。
不便な地域ほど、住み始める前の準備や現地確認にも時間と体力が必要です。
定年後に移住する予定であっても、現役のうちに候補地を訪れ、必要な費用や自治体のサポート体制や手続きを整理しておくと判断しやすくなります。
ポイント②:今の住まいを早く手放さない方法も考える
移住先が自分に合うかは、実際に暮らしてみなければ分からない部分もあります。
可能であれば、最初から今の住まいを売却したりせず、お試し移住や二拠点生活から始める方法もあります。
ただし、住まいを二つ維持すると、家賃や管理費、光熱費、移動費などがかかります。
試す期間と予算を決め、「何を確認できたら本格的に移るのか」を考えておくことが大切です。
ポイント③:困ったときに頼れる相手を確認する
シングルの移住では、病気やけがをしたとき、災害が起きたとき、困りごとがあったときに、誰へ連絡できるかも確認しておきたいところです。
親族や友人が近くにいるかだけでなく、自治体の相談窓口、地域の見守りサービス、民間の生活支援なども調べておきましょう。
何かあったときの連絡先を複数持っていると安心です。
【判断のヒント】
- 車を運転しなくなっても、候補地で買い物や通院を続けられそうですか?
- 最も過ごしにくい季節に滞在しても、そこで暮らしたいと思えそうですか?
よくある誤解・注意点
誤解①:実家なら住居の費用はかからない
実家は新たに住宅を買う必要もないため、安心で経済的に見えることがあります。
しかし、古い住宅では、修繕費、固定資産税、庭や建物の管理費も必要です。
「実家があるから戻る」と決めるのではなく、今の自分が一人で暮らし続けやすい住まいかを確認しましょう。
誤解②:旅行で気に入った場所を新たな住居にするとよい
旅行では、景色や食事、非日常の雰囲気を楽しめます。
一方、暮らしでは、通院、買い物、ごみ出し、近所付き合い、家の管理などが毎日の課題になります。
観光したときの印象だけで決めず、生活者として過ごしたときに無理がないかを確かめることが大切です。
※この記事では制度の細かい例外までは扱いません。
判断の軸をつかむことを目的としています。
まとめ
定年後に、実家へ戻ることや地方へ移住することは、暮らし方の選択肢の一つです。
土地勘のある故郷へ戻る安心感や、自然の近くで新しい生活を始める楽しさもあります。
まずは、候補地の日常生活を実際に確認してみましょう。
可能であれば、気候のよい季節だけでなく、暑さや寒さ、雪、雨などが厳しい時期にも滞在してみることが大切です。
そこでどのような一日を過ごし、誰とつながり、年齢を重ねても暮らし続けられるかを考えてみましょう。
👉次に読むQ&A: q067 老後の住居費、見落としやすいポイントは?
次の記事では、住宅ローンや家賃以外に見落としがちな、老後の住居費のポイントを整理します。
この記事を書いた人
FPとうか
1級FP技能士/社会保険労務士試験合格者。
50代シングル会社員向けに、老後資金・働き方・学び直しなど、
「これからの人生を整えるための情報」を発信しています。
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